11月から練習が始まった
課外活動のミュージカル”Beauty and the Beast”。
娘は週に3回、放課後の練習に欠かさず参加してきたが
いよいよ先週末が本番だった。
結局、直前に怖気づき
主役のベルのオーディションは受けることなく、
『その他大勢の村人』と
森の中でベルたちを襲う『狼たち』の役となった娘だが、
そんなことを気にする風もなく
練習の後は毎回、意気揚々と帰ってきた。
「ガストン(野獣とベルを取り合うことになる
村のハンサムボーイ)の役をやるL君って
ハンサムなんだよ」
「ガストンは筋肉隆々じゃないといけないから
衣装の胸とか腕のあたりが膨らんでいる衣装なんだよ」
「戦うシーンでは、ガストンが野獣の
お尻をキックするんだよ。笑える!」
など、ガストンの役に選ばれた
お気に入りのL君の話ばかり聞かされていたが、
ちゃんと練習はしていたようで
3月に入った頃には自分の役だけでなく
全ストーリーの歌と踊りをほとんど覚えてしまっているようだった。
最終週は、金〜日曜日の本番に向けて
会場となる市内の中学校の体育館で
月〜木曜まで毎日リハーサルが行われた。
「病気でも学校を休んでも、死んでない限りリハーサルを休んじゃいけないんだって」
と、インストラクターの脅しを真に受けている。
「衣装の下に着る黒いシャツとレギンス、
靴下とバレーシューズは絶対、真っ黒じゃないといけないんだよ。
グレーとか模様が入ってるのはダメだからね」。
親の言うこともこのぐらい聞いてくれるといいのだけど。
それでも、前日の夜は急に不安になったのか
涙目でこう言ってきた。
「リハーサルで狼の衣装に着替えるとき、
着替えが間に合わなくて舞台に上がれなかったの。
本番で間に合わないと困るから着替えを手伝って」。
あんなに楽しそうにしていたのに
やっぱり直前になると少しは緊張するらしい。
これもいい経験。
「大丈夫。ディレクターにちゃんと言って
手伝わせてもらえるようにするね」。
そして、初日の金曜日。
5時半に会場入りすると、
控え室(中学校の運動部員の更衣室らしい)で
役者たちが着替えたり化粧をしたりしている。
「これから最終リハーサルをします。
子どもたちの気が散るので親は会場から出て行ってください」。
なんだ、ちょっと拍子抜け。
リハーサルの様子を観察できると思ったのに。
近所にあったStarbucks でダンナと時間をつぶして
開演時間に会場に戻るとかなりの観客で混雑していた。
そして7時。
オープニングの音楽が鳴り始めた。
一年生ぐらいなら、普段はもうすぐベッドタイムという子どももいるだろし、
こんな時間から始まるミュージカルに出演するというだけでも
『うちの子も大きくなったなあ』と
妙に感慨深い。
幕が開くと、そこは村人たちが集うシーン。
ちゃんと腕を組むポーズをとって微動だにせずに立っている娘がいた。
まだ始まったばかりだというのに
なんだかもう胸がいっぱいになってきた。
(次回へ続く)