一年に一度、数週間かけて
テーマに沿ったリサーチや工作を行うプロジェクトの
宿題が出ることは前にも書いた通りだが、
3年生の今年は『Native American(アメリカ原住民)』
についてがテーマだった。
アメリカの建国の歴史は
小学校に入る前後からサンクスギビングの祝日について
繰り返し聞かされることで自然と学んで行くのだが、
そのピルグリムたちがイギリスからやってくる
ずっと前からアメリカ大陸に住んでいた
アメリカ原住民について
きちんと教えている州は実はあまり多くない。
Montana, Idaho, Minnesota, New Mexico, Oklahoma,
Wisconsin, North Dakota, South Dakota などでは
アメリカ原住民についてのカリキュラムを
必須としているらしいが、
カリフォルニアの取り組みについては
調べてみてもどこにも資料が見当たらない。
ヨーロッパからやって来た移民たちが
先住民たちを押しのけて新しい国を建国、
少数民族となった彼らは
特別区のようなところに追いやられて居住し、
満足とはいえない生活や教育レベルにあることを考えると
取り扱いにくい問題であることがうかがえる。
そのせいか、娘のプロジェクトも
『Native American』という大きなくくりではなく
その中でも3000年ほど前からサンフランシスコ一帯に住んでいたと言われる
『Ohlone Tribe(オローニ族)』について
その生活様式やその知恵などについて学ぶ、という
かなり的を絞ったテーマとなっていた。
あまり深読みせずに
「3000年前の人間がどんな生活をしていたか」という
シンプルな解釈で取り組めばいいらしい。
課題は3つのテーマから選ぶ。
・Ohlone Tribeの食事メニューを考案する(写真下)
・Ohlone Tribeの衣服を再現する
・Ohlone Tribeの家のミニチュアとジオラマを作る
娘はOhlone の家を作る、と最初から決めていた。
すでにそれぞれのテーマについて学習済みらしく、
娘は「Tule(トゥーリーというツリグサの一種)をかぶせた
ドームみたいな家なんだよ」とさらっと言うが、
Tule なんていう植物は聞いたこともないし、
調べてみると、もうこの辺りには生育していないようだ。
何か代わりになるものを探さないと。
スイセンのような細長い葉っぱを探して
近所の公園を2箇所ほど訪れてみたが、
そんな植物はどこにも見当たらない。
裏庭の畑にたくさんの植物や野菜を植えている
ご近所さんを思い出し、訪ねてみた。
「細長い葉っぱを探してるんだけど、お宅にない?」
「んー、草はないけどヤシの木だったらあるから葉っぱを取ってあげるよ」。
ゆうに50cm以上はある葉っぱが
団扇のひらのように広がって生えているフサを
2つほどもらって帰ると、
さっそくそれを細く手で裂く作業に入った。
作業をする娘と私の頭の中には
立派なTule House のイメージが描かれ
もう出来上がったかのような気分になっていたが、
実際はそう簡単にはいかなかった。
翌週末、裂いたヤシの葉っぱをかぶせるための
フレーム作りにとりかかった。
これが思いのほか大変だった。
本来なら太い木の枝を細く削ったものや
柳のようなよくしなう素材を使って
ドームのような形の骨組みを作るのだが
今度はその材料が見つからない。
仕方がないのでクリーニングハンガーを使うことにした。
いざ工作に使おうとすると
針金は意外と硬く、切ったり折り曲げたりして
滑らかなドーム型の骨組を作るのは
思ったより難しかった。
この日は骨組み作りだけで終わってしまった。
翌日、ようやく骨組みの上に
裂いたヤシの葉をかぶせていく作業にとりかかった。
水平にかけられた三層の針金に
それぞれ半分に折ったヤシの葉っぱをかぶせ
その上から紐で固定、
はみ出した端っこの部分を切りそろえればドームハウスの出来上がりだ。
私が体裁を整えている間に
娘は厚紙でジオラマの土台と
オローニ族の家族、家の中に必ずあったという囲炉裏などを作り始めた。
「オローニの人たちは鹿や熊の毛皮を着ていたんだよ」。
「ご飯はドングリや木ノ実をつぶして食べてたんだ」。
「家は必ず川の近くに作ってたから、川も描かないとね」。
娘はNative American の専門家気どりで講釈をしながら
サラサラと絵を描き、色を塗っている。
その土台にドームハウスを固定、
狩りに出かけるパパを見送るママと子供を
その入り口に立たせたら完成だ(写真上)。
私としては、もっとヤシの葉をたくさんかぶせればよかったな、とか
ハンガーの代わりにもっときれいなドームを作れる材料はなかったかな、とか
心残りがなくはなかったが、娘は大満足。
提出締切日当日、
学校に持っていくとクラスメートがいっせいに寄ってきた。
娘はドヤ顔で作品を見せている。
それを見ながら私は、
今年も無事、ホームプロジェクトを乗り切ったと
ホッと一息ついた。
お疲れ様でした。