学年末まで学校に戻ることはないという決定を受け、
従来形式の卒業式やパーティが
すべてキャンセルとなったことは前に書いたとおりだ。
卒業証書やアルバムが郵送されてくるだけで
終わりかと思いきや、
そこで黙って引き下がらないのが
イベント好きのアメリカ人。
5月16日、全国の卒業生に向けて
“Graduate Together” という特別番組が
テレビで放映され、
Obama 前大統領がスピーチをしたのを皮切りに
(現大統領がいかに不人気かがよく分かる)
全国的に卒業生を祝おうという機運が盛り上がった。
Facebook もバーチャル・ライブイベントを開催し、
Oprah Winfrey などのセレブが祝辞を送ったり、
州ごとにアメリカ中の高校と大学の名前が読み上げられ、
写真やビデオなどと一緒に
校長および学長からのメッセージなども披露されたという。
娘の学校もバーチャル卒業式の準備を進めているとは聞いていたが、
自己紹介の写真入りのスライドを作成する宿題が出た以外は
直前まで詳細は不明だった。
5月末になり、
教室に残したままになっている教材類や
アート作品などの引き取り、
借りている図書館の本の返却などの事務的な連絡のなかで
卒業イベントに関する詳細がついに明らかになった。
卒業式の予定だった日に車でのパレードを行い、
前日にはバーチャルでのセレモニーが行われるという。
パレードは、卒業生を乗せた各家庭の車が集合し
学校の周りを列をなして走行するというもので、
6月から屋外での活動に対する規制が少し緩くなったのを見計らって
実施に踏み切ったのだろう。
水性チョークで絵や文字を描くなど車を飾り立て
目一杯オシャレして参加するよう先生から言われ、
しょげていた娘も少し気を取り直したようだった。
さっそくアマゾンで見つけた
レモン柄の夏らしいドレスと水性チョークを購入した。
車から降りることはできないし
みんなと写真を撮ることもないのだろうが、
卒業式に向けてドレスを新調するという普通の行為が
とても特別に感じた。
学校での荷物の引き取りは、車から下車することなく、
トランクに載せておいた返却物と引き取り荷物を
担任の先生と係の保護者が積み替えてくれ、
あっけなく終わった。
もうこの校舎に入ることもないだろう。
家に帰って引き取り荷物を開けてみると、
卒業をアピールする小さな掲示板が入っていた(写真)。
大学の卒業生がかぶっているのをよく見る学帽と
娘の学校のマスコットが描かれ、
“Fifth Grade Congratulations!”(5年生おめでとう!)
とのメッセージが読める。
選挙の際、支持者をアピールするのに使われている掲示板をよく見かけるが、
今年はきっと全国の小中高校の卒業生の家の前に
これが立てられているに違いない。
うちの近所でも、中学、高校各校のロゴ入りの掲示板を
あちこちで見かけた。
これを見ると、みんなが同じ思いで卒業の日を迎えているんだな、と
親の私でも、少し仲間意識みたいなものを感じてしまう。
これがよくいうコミュニティという感覚なのだろう。
同時に、娘が小学校を卒業するんだ、という
嬉しいような切ないような気持ちがふと込み上げてきた。
いや、日本だったら5年生はまだ卒業じゃないんだから
泣いたりしないぞ。。。!