月別アーカイブ: 6月 2020

Shelter in Place でも妥協しないGraduation

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学年末まで学校に戻ることはないという決定を受け、
従来形式の卒業式やパーティが
すべてキャンセルとなったことは前に書いたとおりだ。

卒業証書やアルバムが郵送されてくるだけで
終わりかと思いきや、
そこで黙って引き下がらないのが
イベント好きのアメリカ人。

5月16日、全国の卒業生に向けて
“Graduate Together” という特別番組が
テレビで放映され、
Obama 前大統領がスピーチをしたのを皮切りに
(現大統領がいかに不人気かがよく分かる)
全国的に卒業生を祝おうという機運が盛り上がった。

Facebook もバーチャル・ライブイベントを開催し、
Oprah Winfrey などのセレブが祝辞を送ったり、
州ごとにアメリカ中の高校と大学の名前が読み上げられ、
写真やビデオなどと一緒に
校長および学長からのメッセージなども披露されたという。

娘の学校もバーチャル卒業式の準備を進めているとは聞いていたが、
自己紹介の写真入りのスライドを作成する宿題が出た以外は
直前まで詳細は不明だった。

5月末になり、
教室に残したままになっている教材類や
アート作品などの引き取り、
借りている図書館の本の返却などの事務的な連絡のなかで
卒業イベントに関する詳細がついに明らかになった。

卒業式の予定だった日に車でのパレードを行い、
前日にはバーチャルでのセレモニーが行われるという。

パレードは、卒業生を乗せた各家庭の車が集合し
学校の周りを列をなして走行するというもので、
6月から屋外での活動に対する規制が少し緩くなったのを見計らって
実施に踏み切ったのだろう。

水性チョークで絵や文字を描くなど車を飾り立て
目一杯オシャレして参加するよう先生から言われ、
しょげていた娘も少し気を取り直したようだった。

さっそくアマゾンで見つけた
レモン柄の夏らしいドレスと水性チョークを購入した。

車から降りることはできないし
みんなと写真を撮ることもないのだろうが、
卒業式に向けてドレスを新調するという普通の行為が
とても特別に感じた。

学校での荷物の引き取りは、車から下車することなく、
トランクに載せておいた返却物と引き取り荷物を
担任の先生と係の保護者が積み替えてくれ、
あっけなく終わった。

もうこの校舎に入ることもないだろう。

家に帰って引き取り荷物を開けてみると、
卒業をアピールする小さな掲示板が入っていた(写真)。
大学の卒業生がかぶっているのをよく見る学帽と
娘の学校のマスコットが描かれ、
“Fifth Grade Congratulations!”(5年生おめでとう!)
とのメッセージが読める。

選挙の際、支持者をアピールするのに使われている掲示板をよく見かけるが、
今年はきっと全国の小中高校の卒業生の家の前に
これが立てられているに違いない。

うちの近所でも、中学、高校各校のロゴ入りの掲示板を
あちこちで見かけた。

これを見ると、みんなが同じ思いで卒業の日を迎えているんだな、と
親の私でも、少し仲間意識みたいなものを感じてしまう。
これがよくいうコミュニティという感覚なのだろう。

同時に、娘が小学校を卒業するんだ、という
嬉しいような切ないような気持ちがふと込み上げてきた。

いや、日本だったら5年生はまだ卒業じゃないんだから
泣いたりしないぞ。。。!

一日中オンラインの私立 vs. 自主学習中心の公立

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4月22日からの新学期は
Distance Learning Phase 2(フェーズ2)と名付けられ、
付け焼き刃的だったフェーズ1よりは
学習内容や課題の指示なども少していねいになり、
使うオンライン教材の種類も増えた(写真)。

それでもやっぱり
教師がライブで授業をするというよりは、
動画やオンライン教材を使って自習し、
日々、宿題を提出するというのが基本だ。

週に2回、5〜6人規模に分けられた小グループごとに
30分のミーティング、
週に1回だけクラス全体でのミーティングが
スケジュールされている。

例えば社会科では、アメリカの独立に関わる
ボストン茶会事件”が最近の学習テーマだったが、
学習フローはこんな感じだ。

『アメリカにやってきた移民の立場で、
本国の親戚に手紙を書きなさい』。

『あなただったらイギリス本国側につきますか?
植民地側につきますか?それはなぜですか?』

Google Docs やGoogle Slides に自分のエッセイをまとめ、
グループミーティングでクラスメートのエッセイを見ながら
ディスカッションをし、
先生からフィードバックやアドバイスをもらう。

アメリカ50州の位置と州都の暗記の課題では
テストが実施される予定だったが、
オンラインでのテストは難しく
最終的にはキャンセルとなり娘は喜んでいた。

理科では、人体の器官やそのはたらきについて
各自、工作や詩など、好きなアプローチでまとめ、提出した。

粘土で体内器官の標本を作って写真に撮っている子もいれば、
ていねいな図解をしている子もいる。
うちの子は何かの替え歌を作っていたが、
これが意外と教師にウケたらしく、
実際に歌ってビデオに撮るよう言われたという。

娘の小学校では、5年生になると
子羊の脳を解剖するというのが伝統行事で
娘もかなり楽しみにしていたが、
残念ながらCOVID-19 のおかげでキャンセルになってしまった。

実際の解剖に匹敵するインパクトを期待するのには無理があるが、
子どもたちの想像力と自主性に任せるという意味では
Distance Learning 以前とあまり変わりはない学習環境なのかもしれない。

まあ、こんなものでしょ、と自分に言い聞かせるようにしていた。

が、ある日、同じスイミング・クラブで
私立学校に通っている子の
ママと話をする機会があり、そうも悠長にかまえていられない気になった。

その子の学校では朝8時半から3時まで
通学していた時と同じスケジュールで
全科目、カレンダー通りにきちんとオンラインで授業をしているという。
体育も音楽も図工も、だ。

公立とはえらい違いだ。。。

普段は私立学校なんて選択肢として考えたこともなかったが、
こういう時にはやっぱり差が出るのだ。

学費を払って私立に通わせていたら
確かに週に2-3回、30分のミーティングでは
親としては不満足だろう。

バーチャルクラスになってからの授業料を
一部払い戻せ、という声も
あちこちの私立校で上がっているというから
学校側も必死だ。

一方で、小学生が一日何時間も
コンピュータの前に座りっぱなしで
学習効果はあるのだろうか、との思いもよぎる。

あとから聞くと、
授業を受けながら別のウインドウやデバイスで
ゲームをしている生徒がいて
保護者を巻き込んでの懇談会に発展したということもあったらしい。

教師の対面時間が長ければいいというものでもないし、
理想の学習環境を望めない現在では
きちんとミーティングに出席して
課題を提出しているだけでも御の字、と
割り切るしかないのだろう。

8月からの新学期には
通常(に近い)授業が始まり、
Distance Learning は3ヶ月でおさらば、
という仮定のもとの話だが。。。