小さい頃からディズニーとともに育った、
というわけではない私は
実は、最近まで『美女と野獣』のストーリーもよく知らなかった。
が、娘がミュージカルの練習を始めてから、
何度もビデオを見たり娘が口ずさむ歌を聞かされたりするうちに
私まで登場人物の特徴や背景の音楽にすっかり詳しくなってしまった。
その上で実際に見るミュージカルは
別の意味で面白かった。
主役のベルは中国系アメリカ人の5年生が務めた。
練習の時は娘たちが「憧れのベル!」と言ってまとわりつくと
恥ずかしそうにしているらしいが、
舞台では立派にたくさんのソロを歌い切った。
ちなみにその弟は、娘と一緒に村人と狼の役をやっている。
映画の中でのガストンはイケ好かないナルシストだが、
舞台でのガストンは娘が気に入るだけあって(?)かなり爽やかな好青年の4年生。
弟はヒビの入ったティーカップ(チップ)の役だ。
ル・フウはガストンのご機嫌ばかりをうかがうさえない男だが、
この役をやっている2年生は
去年のミュージカルでも目立っていたコミカルな男の子で、将来有望。
野獣の役をやっているのは
娘のクラスメートのお兄ちゃんで、
声も顔も弟とそっくり。
少し自信なさげな感じは野獣とは似ても似つかない。
こう書くと、男の子ばかりが目につくが、
実際は男子の人数は女子の半分ぐらい。
しかもその多くが1-2年生。
やっぱり男の子は少し大きくなると
ミュージカルよりもスポーツがいいのだろう。
そのせいで、娘を含めて男役をやらされる女子も大勢いたらしい。
その女子もやっぱり低学年が大半だ。
打ち上げの時に、ディレクターが
「リハーサル3日目までは、本当に本番ができるか不安だった」
と言うのもよく分かる。
やり遂げた子どもたちもあっぱれだが
それをまとめたディレクターは、さすがプロだ。
プロといえば、ディレクターだけでなく
美術・音響担当者も専門家がちゃんといたのにはびっくり。
衣装や舞台背景もそれなりにきちんとしたものだった。
一人当たり$100の参加費でどうやりくりするのかと
ずっと不思議に思っていたが、
本番を迎えてようやくそのカラクリが明らかになった。
大きいのは何と言っても興行収入だろう。
チケットは$7。
250名収容できるという会場は、3日間とも満席だった。
会場で販売するスナック菓子や出演者への花束などは
参加者(役者)の保護者から寄付を募っていたから、原価ゼロ。
会場は、昨年まで娘の小学校の校長だった女性が
今年から校長を務めている中学校の体育館だったから
きっと無料で借りられたのだろう
(ちなみにその校長の1年生の息子も村人と狼)。
もちろん、チケットやスナック菓子の販売も
参加者の親たちがボランティアでやっている。
本番を迎え、急に親も巻き込まれることになったが
普段からファンドレイジング(資金集め)活動やボランティアが
当たり前の文化だけあって、みんな慣れたものだ。
最終日の舞台の後には打ち上げも行われたが、
それも娘が学童に通っているレクリエーションセンターが会場。
ドリンクや立食形式の食事やデザートも
もちろんすべて保護者の手作りか寄付。
真面目な顔で観客席の私たちには目もくれずに演技をしている
娘の晴れの舞台を観客席から眺めて
親バカ気分を満喫できただけでなく、
娘の学校やそのコミュニティに
また少し愛着が湧いてきたような気がした。